「建築技術者教育アカデミー」の
設立と教育概要

建築技術者教育アカデミー 商標登録証 2015年に厚生労働省が常用労働者30人以上の7200社を対象に実施した調査によると、人材育成に問題があると回答した事務所は71.6%で、問題点の内訳としては、「指導する人材が不足」(53.5%)、「人材育成を行う時間がない」(49.1%)等、人材育成に関わる実態の深刻さが浮き彫りにされました。建設業界においても教育に掛けるパワー(資金と人材)が不足している中小・地域ゼネコン、工務店においては人材育成に係る問題は深刻であり、「費用対効果があり、実効性のある教育」のニーズは高まっていると思われます。
 そこでアクトエンジニアリングでは、新規事業として、講師経験豊富な大手・準大手ゼネコンのOBを登録型講師として選抜し、講師派遣をベースとした「建築技術者教育アカデミー」を立ち上げ、2017年4月に商標登録致しました。当面は、大学、建設業振興基金、富士教育訓練センターのような公的機関を対象とした「講師派遣」に重点を置いておりますが、将来構想としては派遣会社、中小ゼネコン、地域ゼネコンを対象とした、「時期」「レベル」「内容」を自らの意思で選択できる「カフェテリア型の集合教育」についても視野に入れております。

厳選された講師陣と教育の特徴

「登録型講師」の条件
  1. 大学非常勤講師、監理技術者資格更新講習会講師、企業内研修講師等の経験者であり、理解しやすい講義の在り方に精通している人材。
  2. 講師は原則として現場所長、ライン部署長、技師長クラスの経験者又は、講義内容のスペシャリスト。
  3. 講義における信頼性と講義レベルを担保するため、一級建築士、1級施工管理技士等の一級国家資格を保有している人材。
  4. OB社員については、伝承する情報自体が古くなってしまう可能性もあることから原則65歳未満の定年再雇用社員であると同時に、日本建築学会、日本建築士会連合会、日本建設業連合会等の社外団体に所属し、ホットな情報を入手できる立場にある人材。
教育の特徴
  1. 講師陣は、大手・準大手ゼネコンの現役・OB社員をベースに構成されているため、講義内容は斬新で、且つ実務に近い実践的な教育が期待できる。
  2. 講義項目については、講師が最も得意とするジャンルに限定しているため、専門性が高くグレードの高い教育が期待できる。

充実した講義内容

■ 講義項目の種別と登録数
  1. 2019年1月現在で、97件の講義項目がありますが、講義内容を受講目的別に層別整理すると、下表のようになります。受講者が何を受講したいか明確な場合に活用できます。
  2. 総合評価方式における公共工事の入札において、監理技術者が保有するCPDのポイントを評価点の加点対象として扱われるケースがあります。本講習会は建築系技術者の「技術力」と「マネジメント力」の向上を狙いとしているものであり、特に、「技術教育」について自己研鑚の結果としてCPDポイントの対象となります。

■ 中小ゼネコンのニーズにも対応した講義内容

 2013年に日本建築士会連合会「建築施工系技術者育成部会」で中小ゼネコン経営者を対象に教育に関わるニーズをヒアリング調査した結果、「①一級国家資格の早期取得、②若手社員の即戦力化、③QCDSE・施工図に関わる基礎知識の修得」の3点が共通意見として提示されました。
 「建築技術者教育アカデミー」では、これらニーズにも対応するために「即効性・実効性のあるカリキュラム」を起案し、「専門性があり経験豊富な講師陣」を選抜し、講師派遣する計画です。
以下に中小ゼネコンにおける教育ニーズに対応した講義のポイントについて説明します。


一級国家資格の早期取得

  • ・技術部長クラスの講師経験者による一級国家資格の受験可能なレベルまでの知識と技術を指導。
  • ・企業内で一級建築施工管理技士等の資格教育を担当する講師も実践指導。

若手社員の即戦力化

  • ・「フレッシュコンクリートの品質管理」等、若手社員が現場で最初に担当する業務を徹底指導。
  • ・大手・準大手ゼネコンに勤務するライン長クラスの現役社員が実体験をベースに教育・指導。

QCDSE・施工図に関わる基礎知識の修得

  • ・所長経験者が、「施工計画」「工程管理」「安全管理」のポイントについて演習を交えて講義。
  • ・技師長、技術部長クラスが技術の専門家として「外装CW」「大空間構造の施工」「三大瑕疵低減」等を講義。
  • ・施工図については、施工図のプロが「屋上防水納まり」「タイル割付け」等、演習を交えて講義。

今後の事業展開

 現在、大学、建設業振興基金、富士教育訓練センターを中心に「講師派遣」を実施しておりますが、今後は他の公的機関に対しても要請が有ればニーズに応じた講師を派遣する計画です。なお、現在、アクトエンジニアリングにおいては改正派遣法に対応した社内教育「アクト塾」を実施中ですが、将来構想として、自社の派遣社員だけでなく、他の派遣会社、中小・地域ゼネコンも視野に入れた「集合教育」についても実現の可能性を考えております。
 将来、企業の枠を超えたこのような教育事業が産・官・学共通のインフラとして浸透し、進展することで建設業界の“担い手不足の解消”と“施工に関わるトラブルや事故の低減”に繋がることを期待しております。